動物園・水族館の必要性を考える

動物園の必要性コラム

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子どもたちに人気の動物園や水族館は必要か?

子どもたちの行きたい場所ランキング上位の常連となっている動物園や水族館。私も子どもの頃に両親にせがんでよく動物園に連れて行ってもらったことを思い出します。なぜ、そんなに動物園に行きたかったのかは今となってはわかりませんが、きっと動物たちがもつ魅力や人間とは違う不思議な生命体に惹かれるものがあったのでしょう。子どもの頃に動物園によく行ったことが影響したのかは不明ですが、その後たくさんの生き物を飼って、動物を学ぶ大学に進み、動物関係の仕事について、今もなお自宅でたくさんの動物と共に暮らしています。そんな私の人生に大きく影響したであろう動物園や水族館の必要性が近年度々議論されています。

動物園や水族館、最大の問題点

存在していて当たり前のように感じている動物園や水族館ですが、近年、動物福祉(アニマルウェルフェア)※1や動物の権利(アニマルライツ)※2の考え方が広まり、人間が動物を支配し、限られた狭い空間で飼育すること、ショーやふれあい体験などに用いられることが動物の幸せや自由を害しているのではないかという意見もあり、動物園や水族館は不要だという考えも広がりをみせています。実際に動物園や水族館では、どんなに努力しても自然と同じように飼育することは難しく、行動の制限や欲求を満たせないことなどによるストレスが原因で異常行動を示すこともあるといわれています。私も大学生になった頃に大好きだった動物園に対してあまり良いイメージを持たなくなっていました。その理由が、動物園の狭い檻に閉じ込められた動物を見ていても楽しくないということでした。

自然界での環境が動物にとって幸せなのか、人間に飼われること幸せなのか、本当ところは動物に聞いてみないとわかりません。ただ現実として人間のエゴの為だけに過酷な環境で飼育されている動物たちも少なくないことは確かです。

動物たちは本当に不幸か?

動物福祉が損なわれているといわれる一方で、動物園や水族館で飼育していた方が自然界よりも繁殖率が上がったり、長生きしたりする動物がいることも報告されていて、人間に飼われていた方が動物たちは安全で幸せな暮らしをできているのではないともいわれています。

動物の行動を引き出す展示場(オランウータン)

また、動物福祉の改善のために飼育環境を工夫する環境エンリッチメント、動物の行動レパートリーを増やすような展示方法である行動展示、動物たちが生息している環境を再現した展示方法である環境展示、動物に負担なく健康管理をできるようにするトレーニングであるハズバンダリートレーニングなどが取り組まれるようになりつつあり、動物福祉の改善の為に尽力する飼育員も増えてきました。さらに、動物にストレスを与えるといわれているショーやふれあい体験のあり方についても考えられるようになり、廃止したり、運営方法を改変したりする園館も出てきました。

これらに加え、動物飼育や施設、職員を充足する為に動物園の収益を上げることやより広い飼育エリアの確保すること、より質の高い飼育技術、獣医療を習得することが日本の動物園・水族館の動物福祉向上の為にも不可欠だと考えられます。多数存在する小さな動物園は廃止して、大きな国立の動物園や水族館にすればいいのではないか意見もあります。

動物園の役割

動物園や水族館というと遊園地と同じような楽しむことを目的としたレジャー施設と捉える方も多いかと思いますが、実は動物園や水族館は博物館相当施設に分類されていて、4つの社会的役割の理念の下運営されています。4つの社会的役割は次の通りです。

1. 希少動物の保護や繁殖による「種の保存」
2. 生き物や地球環境について学ぶ「教育・環境教育」
3. 生き物や生息環境の「調査・研究」
4. 楽しい時間を提供する「レクリエーション」

この4つの社会的役割があることを知れば動物園や水族館の有用性は確かなものであると考え、その必要性を疑うはずもないのですが、それでも動物園や水族館は不要だという意見が後を絶たないのも事実です。その理由として、来園者・来館者を楽しませるレクリエーションに傾倒して他の役割が見える形で実現できていないという点や動物園や水族館で生き物を飼育しなくても実現できるという点などが挙げられています。

子どもを成長させる、地球環境を守る施設でありたい

生き物に興味を持つきっかけは、かわいい、ワクワクする、面白いでも何でもいいと思います。その入り口のひとつとして動物園や水族館はとても有用な施設であり、イベントなどもとても効果のあることに違いはありません。生き物に興味を持ってもらい、その結果として、子どもたちが優しい心を育み、少しでも地球の環境や生き物について少しでもいいので考えてもらいたいと願います。そして、地球や生き物にできることを何かひとつでも行動に写してもらえたら大変嬉しく思います。

変革、そして未来へ

人々を楽しませることのみを優先した形での動物園や水族館の存続は課題が山積です。動物園や水族館も大きな変革をもたらさないといけないということは、動物園や水族館に関わる者たちの責務だと感じています。今までのように手軽に楽しく動物たちに会いに行ける施設を維持したままで、生き物の素晴らしさを学び、地球環境に興味を持つことができるような施設へと生まれ変わることを期待しています。私にとって人生の転機となったであろう動物園や水族館を未来の子どもたちも大好きになってくれて、子どもたちの心に大きな変化をもたらすことを願っています。 

※1 動物福祉(アニマルウェルフェア):人間が動物に対して与える痛みやストレスといった苦痛を最小限に抑え、動物の心理学的幸福を実現する考え
※2 動物の権利(アニマルライツ):動物には人間から搾取や残虐な扱いを受けることなく、人間と同じように動物にも本性に従って生きる権利があるとする考え

 

この記事を書いた人
北川 健史

麻布大学で動物人間関係学を学び、馬が子供の発達に与える影響について研究。大学院(修士)を卒業後は、(株)Animal life Solutionsで勤務し、馬と小動物のふれあい広場の運営に携わりながら、大学、専門学校等での講師やドッグトレーナーとしての仕事にも従事する。

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